♪ピンポーン
 「おーい、卜部ぇ。来たよお。」
 明は努めて平静を装って明るく声を掛けた。
 本当は何回訪れても、緊張から来る胸の高鳴りは抑えられない。
 まして今回の美琴宅訪問は、あんなことがあった直後の日曜日である。
 何かあるかもしれないという期待感=すなわち少々の下心を抱いていることだけは、美琴に悟られたくはなかった。
 ところがそんな心配はほんの杞憂に終わるくらいのサプライズが、明を待ち受けていたのである…

* * *

「にゃん♪」
 ドアを開けて明を出迎えた美琴は、何と猫耳カチューシャを着けていたのだった。
 それだけではない。どこで誂えたのか、美琴はセパレート型の黒のフェイクファーのチューブトップとホットパンツで、黒猫のコスプレをしていたのだった。
 何かのキャンペーンのCMで、どこぞのグラビアアイドルがしていた格好とそっくりである。
 「ご主人様いらっしゃいにゃん♪みこにゃんの家にようこそにゃん♪」
 「う、卜部…お、お前…」
 「今日だけはみこにゃんって呼んで欲しいにゃん♪そいでご主人様はみこにゃんの飼い主にゃん♪」
 明は絶句して固まるしかなかった。つまり美琴は、明の性癖どストライクのイメージプレイをしようと誘っているのだ。
 まさかの展開に、どうリアクションすればいいのか、明には全く見当も付かなかった。
 ただ、目の前の美琴の格好には、自然と頬が緩んでしまう。半開きの口の端からつーっ
とよだれが溢れてきて、その感触で明はやっと我に返ることができた。
 「さっ、ご主人様、みこにゃんの部屋に来るにゃん♪」
 明の様子には全くお構い無しに、美琴は明の腕を取って自室へと導くのだった…

* * *

「ご主人様、疲れてないですかにゃん?マッサージしてあげるから、ベッドに仰向けに寝てうーんって伸びをするにゃん♪」
 「えっ?そうでもないけど…じゃあお言葉に甘えて…」
 美琴が何を企んでいるのか、明には知る由もなく、ひとまず言われた通りに従うことにした。
 明が伸びをするとちょうどベッドの金具に手が当たることになる。
 いつの間にか美琴はベッドの頭のほうに回り込んでいた。
 美琴は明の手を取ると、何といきなりタオルでベッドの金具に両手とも縛り付けてしまったのだ。
 「うっ卜部っ…一体何をっ…!」
 美琴はゆっくりと明の下腹のあたりに跨ってきた。
 「ご主人様がこういうの大好きなの知ってるにゃん♪」
 「そ…そんなことは…」
 「じゃあどうして縛られる時に全然抵抗しなかったにゃあ?」
 図星を突かれて明は黙るしかなかった。
 「いいから黙ってここはみこにゃんにお任せにゃん♪あれ?」
 美琴が声を上げる。
 「なんかお尻に当たるモノがあるにゃあ…」
 美琴に看破された通り、このシチュエーションに正直に反応してしまった明のジュニアが、
  ズボンの中でムクムクと体積を増し、美琴のヒップをノックしていたのだった…

* * *

「何が当たってるのか確かめるにゃん♪」
 美琴は明の腹の上で後ろに向き直ると、下半身をそろそろと上の方に移動させていった。
 (う…卜部のお尻がどアップに!)
 黒のフェイクファーのホットパンツのお尻には、ご丁寧に長い尻尾まで縫い付けられていた。
 美琴のお尻はちょうど明の喉の辺りまで上がってきた。
もし顔を下に移動できたら、お尻に顔を埋めることだってできそうである。
 しかし今は身動きが取れない。魅力的なゴムまりのような美琴のヒップを、明は眺めることしかできないのだ。
 (し、しかし…このポーズって…)
 そう、期せずして、二人は着衣とはいえシックスナインの体位になっていたのだ。
 いろいろな妄想が一瞬で頭をよぎり、それは一気に明の海綿体を充血させた。
 「ご主人様のここ…何だか苦しそうにゃん…みこにゃんが楽にしてあげるにゃん♪」
 美琴が独り言のように呟く。明のそこは、誰の目で見てもはっきりと分かるぐらいに突っ張っていた。
 美琴が何をしているのか、明にはお尻のアップに遮られて見えない。
 カチャカチャと、ベルトのバックルを外す音が聞こえ、おそらくボタンが外され、ジッパーが下げられる音が聞こえた。
 次の瞬間、下半身が一気に外気にさらされる感覚が明を襲った。

* * *

「にゃーん…想像してたのよりずっと大きいにゃん…」
 リップサービスではなく、美琴は本心からそう言っているようだった。
明は来る前にシャワーを浴びてきて本当に良かったと思った。
 「でもご主人様のここ…何だかおいしそう…みこにゃんベーコンだけじゃなくてソーセージも大好物にゃん♪」
 「痛っ!」
 なんと美琴は張り切った明の亀頭に歯を当ててきたのだった。
 最大限に膨れ上がっていたイチモツだったが、痛みのせいで一気にしぼんでしまった。
 「ありゃあ…ご主人様ごめんなさいにゃあ…みこにゃんが治療するにゃあ…」
 すると美琴は、小さくなった陰茎全体を口に咥え込み、口の中でペロペロと舐め回してくれた。
 (ううっ…気持ちいいっ…これがフェラチオかあ…)
 またもや明のジュニアは快感を得てムクムクと成長し始めた。
 「ほら…もうすっかり回復して…お口の中に収まらなくなってきたにゃあ…」
 美琴はペニスを一旦口から出し、嬉しそうに言った。
 「すっかり元気になって…よかったにゃん♪チュッ」
 美琴は先端に軽くキスすると、雄々しくそそりたった陰茎に、愛おしそうに頬ずりするのだった。
 「ううっ…みこにゃん…それ…気持ちいいよお…」
 「ご主人様、やっとみこにゃんって呼んでくれたにゃん♪嬉しいにゃん♪」
 ペニスの先端が、生暖かいヌルッとした空間に捉えられた。
 相変わらず美琴のお尻が視界を遮っており、明にはペニスにどんな愛撫が施されているのかは見えない。
 ただこれまでには体験したことのない快感が絶え間なく押し寄せてくるのだ。
明はもう見るのは諦めて、快感だけに身を委ねることにした。
 美琴は熟したプラムのように赤黒く張り切った亀頭に唇を被せると、舌でカリのエラの部分をぺろぺろと舐め回した。
 「ううう…卜部ぇ…俺もう…」
 「ん…いいよ…椿くん…口に出して…」
 もう猫言葉も忘れ、二人は口淫に熱中しているのだった。
 美琴の許しの言葉にスイッチが入った明は、自然に腰を上下しだした。
美琴もそれに応える応えるかのように、頭を上下して、明自身をできるだけ深く咥え込もうとする。
 二人は誰に教わるでもなく、本能的に動きをシンクロさせていたのだった。
 美琴が動きに合わせて漏らす、んっんっという吐息が、いやがうえにも明の性感を高める。
 もう歯止めは効かなかった。
 「で、出る…!うああああああああ…!」
 自分史上最高の快感に包まれて、明は精を放った。
[うっ…うぐっ…ごぼっ…」
 明の射精と同時に、美琴もマウスウオータークラッシュを迎えた。
 明の下腹は、生ぬるい美琴の唾液にすっかり濡れそぼつこととなった…

* * *

「はあっ、はあっ…」
 強烈な快感に見舞われた明の呼吸の乱れは、なかなか収まらなかった。
 「大変…拭かないと…もうシーツをタオル代わりにしちゃうね…」
 美琴はシーツをベッドから剥がすと、明に渡した。
 「悪いけど、自分で拭いてくれる?恥ずかしいから、早くパンツ穿いてね…」
 美琴は頬が赤く染まった顔を背け、ぶっきらぼうに言った。
 さっき頭を振った勢いでか、猫耳カチューシャは外れてしまって、みこにゃんモードは終了でもうすっかり普段の美琴に戻ってしまったようだ。
 「う、うん…卜部、手首…あ、あれ?」
 気が付くと、明の手首を戒めていたタオルはとっくに外れていた。
 「…そんなに固く結んでた訳じゃないのに、何で自分から外そうとしなかったのかしら…」
 美琴のもっともな疑問に、今度は明が赤面する番だった。
 明は照れ隠しに言い放った。
 「いやあ、しかし俺たち、まだキスもしてないのに…順番違っちゃったかな?あははっ…」
 「あーっ!」
 美琴が素っ頓狂な声を上げた。
 「何?もしかして卜部、今気づいたの?」
 美琴は明にくるりと背を向けると、肩を小刻みに震わせながら絞り出すように言った。
 「椿くん…これから洗濯とかあるから…今日はもう帰ってね…」
 「う、うん…」
 美琴のただならぬ様子に、明は頷くしかなかった。
 「椿くん!」
 「は、はい?」
 改まって大きな声で名を呼ばれ、明は思わず畏まってしまった。
 「いつか、ちゃんとキスしましょうね!」
 美琴は明と固い握手を交わすのだった。
 (これって…何か違う気がする…)
 明は自分の心の声に困り笑いを浮かべるしかなかった…           〈了〉

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