「…よし、できた!」
ある夜のこと。
集中してテスト勉強をしたいからという理由で姉の陽子に
【部屋に閉じこもる宣言】をした明は、卜部へのプレゼントを作っていた。
甘い、特別に甘いプレゼントである。

姉の反応はと言えば、いつも通り「お年頃ね」である。
それは、今回ばかりは正しい反応であった。

−*−*−*−*−*−

翌朝。美琴が自宅のマンションを出ると、珍しいことに椿がそこにいた。

「椿くん!いったいどうしたの?まだ放課後じゃないわよ」
「あ、ああ。実は卜部に渡したいものがあってさ!」
「…放課後でもよかったんじゃないの?」
「ほら、きょきょ今日はテストがあるだろ?
 どうしても今日のテスト前に渡したかったんだよ。」
「…どうして?」
「じ実はこれなんだけどさ、昨日すごく集中して勉強していたときのよだれを
 カプセルに入れてみたんだ。」

そういって、一粒のカプセルを差し出す椿。

「これをテスト前に口の中に入れておくんだ。よだれでは溶けないカプセルだから、
 もしテスト中に問題が解けなくなったら、カプセルを噛んで中身を舐めてみてよ。
 きっとリラックスして、解けるようになるからさ。」

「面白いことを考えるのね。試してみるわ、ありがとう、椿くん。」

「いやー、昨日あまりにも勉強が捗るからさ、この集中力を卜部にも
 味わってもらいたいなって思って!じゃ、じゃあオレは先に学校行ってるから!」

言い終わるや否や、逃げるように学校に向かって走っていく椿。
美琴もプレゼントをカバンにしまい、学校へと向かった。

−*−*−*−*−*−

本日は期末テストである。
今日の最後のテストの時間。教室は静まり返り、カリカリとペンの音だけが響く。
時折、僅かな衣擦れの音やペンケースを開ける音がするくらいだ。
スムーズに問題を解いていく美琴だったが、残り一問でその手が止まった

(困ったわね…)

どうにも解けないのである。昨晩、復習をした記憶はあるところなのに
解き方を忘れてしまったのだ。

(あ…そういえば椿くんのプレゼント…)

美琴は椿の助言に従い、カプセルを口の中に入れていた。
口に入れたまま問題に集中して、すっかり存在を忘れていたのだ。

757 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2012/12/16(日) 02:30:08.63 ID:3Fqb/bgW [3/4]
(せっかくだし、使ってみましょ)

美琴がカプセルを噛んだ瞬間。

ギッ…

静かな教室に、椅子を引く音が響く。
それと同時に美琴の身体は急激に熱を帯び始める。
両足の太ももをぴったりとくっつけて固まり、
右手のペンを握る手は、少し強くなっていた。

(あれ…?なんだか…)

身体中が熱い。しかも、ある一点が特に熱い。
そこを発信源として、微弱な電流が流れているような感覚。
電流から逃れるように太ももをすり合わせてしまうが、
僅かな衣擦れの音さえも気になってしまい、大きく動くことはできない。

(椿くん…!これ…!)

椿のプレゼントになにかあることは予想がついていた。
椿くんが喜ぶならと、素直に受け入れることにしたのである。
しかし、これほどのものであるとは流石に思っていなかったのだ。
おそらく美琴の異変は、椿にだけは気づかれているだろう。
かといって椿の方を睨むこともできない。…顔を見られるのが恥ずかしいからだ。

(ちょっと…これ、は…強すぎる…!)

逃れるための身じろぎが出来ぬぶん、その刺激は受け入れざるを得ない。
結果的に、もっと大きく身じろぎをしたくなるという悪循環である。
美琴は左手を机の下におろして太ももの上でギュッとスカートを掴み、
徐々に近づいているであろうその時を、必死に遠ざけようとした。
右腕も、もはやペンを握っているというよりは、身体を支えている状態である。

「……っ…」

なんとか声は出さずに済んでいるものの、明らかにテスト中とは思えない吐息が漏れる。

(テスト中なのに…!椿くんにも気づかれているのに…だめ!耐えるのよ!)

徐々に高まる刺激に耐え切れず、つま先は立ち上がり、かかとが浮く。
少しだけ脚が持ち上がったとき、美琴は「熱」が、下着にまで浸透するほどの状態であることを確信した。
まさかあり得ないとはわかっているのだが、あまり脚を持ち上げると、
「音」が聞こえてしまうのではないか…という不安に駆られる。
ただでさえ、最小限に抑えているものの、ずっと小刻みに太ももをすり合わせているのだ。
教室に響くペンの音にかき消されても、椿にだけは聞こえてしまうかもしれない。
だからといって、これ以上動きを抑えることはもうできない。

「………っ……んっ…」

逃れるための動きが逆に刺激となり、新たな快感を生む。
今ではつま先は完全に立ち上がり、膝が机に届かんばかりである。
時間がたてば立つほどに、その時は確実に近づいているとしか思えない。
どうやら覚悟を決めるしかないようだった。

その時、美琴は口の中に小さな違和感を感じた。
最初のものより小さなカプセルがある。そう理解するより前に、
歯を食いしばった拍子にそれはあっけなく割れた。

(…えっ?…み、右手…が…)

左手、脚、身体、もはやその全てで耐えに耐え、
これ以上はどんな僅かな刺激にも耐えられない。
そんな状態にも関わらず、右手は容赦なく握ったペンをゆっくりと手前側に倒してゆく。

(このままだと…!止まって!だめ!)

手前に倒されたペンの先端が、別の先端に触れた。

「……んっっ!」

ギッ…ギッ……ギッ……

静かな教室に、椅子を引く音が響く。2度…3度…少し間を開けて4度目。
その度にボサボサの髪が、わずかに揺れ動いた。

「…んっ……くっ……はぁっ………はぁ……はぁ…」

ゆっくりとつま先を下ろし、握っていた左手を軽く開く。
余韻に浸りながら、呼吸が整うのを待つ。
幸いにも、小さく漏れた声は、椅子の音にかき消されたようだった。

すぐに椿の席から、ペンの転がる音や、椅子を引く音が何度かした。
一連の音は自分が出したものだ、だから卜部は何も怪しくない、そう主張するように。

−*−*−*−*−*−

テストが終わり、他の生徒達が帰り支度をする中、
美琴はいつもの姿勢で机に突っ伏して寝ていた。

クラス全員が帰ったのを確認し、美琴も身体をおこし、そしてゆっくりと立ち上がる。
…実は寝ていたのではなく、クラス全員が出ていくのを待っていたのだ。

「…椿くん、これはちょっと困るわ…。」
美琴はカバンを手に取ると、それでスカートの後ろを隠すようにして日課の場所へと向かうのだった。

END

                                                                                 戻る