6月吉日。
上野と丘の結婚式が華やかに執り行われた。
二次会では学生時代の気の合う仲間たちで集まり大いに盛り上がっていた。
これはそんな時に起こった、おれの思い出話の一つである。

「よぉーっし!待たせたな!」
賑やかな雰囲気の中、さらに騒々しくハウリングさせた声が響く。
「中島仁志プレゼンツ!上野&丘ハッピーウェディング、サプライズDVDの上映だ!!」
「おおーっ!待ってました!」
日も傾き、それほど大きな店ではないが小洒落たバーで懐かしいメンバーたちが騒いでいる。
男性陣は着慣れていない感じのブラックスーツにカラーシャツ、もしくは堅っ苦しく礼服に白タイ。
一方、女性陣はなんとも華々しくパステルカラーなドレスに身を包み、オシャレを楽しんでいるようだ。
「はぁ〜っ…美琴、何で帰っちゃうかなぁ…」
彼女は確かに酒の席は好きではない。
「だからといって丘は一番仲の良い友だちじゃないか…なのにそそくさと帰っちゃうなんて…」
ブツブツとこぼしながら隅のテーブルでサラダのミニトマトを突っついていたおれに誰かが声をかける。
「ねぇ、椿くんだよね?」
「ん…?」
振り返るとそこにはレモンイエローのパーティードレスを着た女性が立っていた。
「やっぱり!わたしのこと、覚えてるかな?」
「えぇっと…」
微かではあるが見覚えのある顔だ。
パーティー用にサイドアップされているがこの少し明るい赤褐色の髪の毛。
そして女性にしては少ししっかりとした感じの口調と姿勢。
「ひょっとして…矢島…矢島秋子?」
「正解!すごい!フルネームも覚えててくれてたんだ!」
自分でもなぜ彼女の下の名前まで覚えていたのかわからなかった。
でも正直な所、メイクされているとはいえあのそばかすが特徴的だった矢島の顔がこの日は眩しく見えた。
「椿くん、久しぶりだね」
「…あぁ、高校卒業以来だもんな」
「元気にしてた?」
「うん、まぁ特に変わりもなかったかな」
「卜部さんとは上手くいってる?」
「…!ガチャッ」
唐突な質問に思わずミニトマトが皿から転がり落ちてしまった。
「し…知ってたのか?」
「知ってるも何も、ここに来る前までずっと椿くんと一緒にいたじゃない。誰が見てもわかるわよ」
「まぁ…それはそうかもな…」
今さら隠すつもりもないが改めて元クラスメートに卜部とのことを突っ込まれると戸惑ってしまう。
「で、どうなの?付き合ってからもう長いの?」
「あぁ、もう5年は経つかな…」
「へぇー!そんなに長いんだ!わたし全然気づかなかったよ!」
驚きと言うよりも矢島の表情は何だか楽しげだった。
(矢島って…こんなに可愛かったっけ…?)
多少のアルコールが入っていたせいか、矢島の表情につられておれの気分も開放的になっていた。
「せっかく久しぶりに会ったんだしさ!外の風に当たりながら二人でもっと話さない?」
「あぁ、そうだな」
アルコールのせいにしてみたものの、その晩やはりおれは彼女に心を奪われていたのかもしれない。
おれはすっかり彼女のペースに自らを投じていた。

照明が落ちてみんなが上映中のスクリーンに注目している中、おれたちは誰もいないテラスへ抜けだした。
そこで矢島と二人で色々と語り合ったのだが、おれは話の内容を覚えていない。
覚えているのはただ、彼女のはじけた笑顔と声、薄暗いテラスで仄かに光るレモンイエローのドレス。
そして柔らかな唇の感触…。
いつの間にか縮まった距離にどちらからともなく、おれたちはキスを交わしていた。
「…椿くん、誰かに見られちゃうよ…」
「…あっちの方に行こう」
みんながいる所からは死角になるテラス片隅の仕切りの影におれたちは隠れた。
「椿くん…」
「矢島…」
もうこれ以上の言葉は必要ないと感じたおれたちはもう一度唇を重ね合わせる。
ボーイッシュな雰囲気を出していた彼女も抱きしめられた途端、女の匂いを漂わせた。
強く抱きしめ、キスをしながらお互いに首筋から腰にかけて本能の赴くままに感触を確かめ合う。
おれは矢島のウエストからヒップへと滑らせるように手をドレスの中へ潜り込ませた。
パンティ越しにその弾力を触知するやいなや、その最後の布切れも軽く下へずらす。
「んんっ…」
塞がれていた唇を一瞬離し、声を漏らした。
再び口を塞がれると彼女は恥じらうように身体をおれに擦り寄せる。
ハリのある可愛らしいお尻を堪能した後、今度はおれの方から唇を離す。
テラスの柵に両手をつかせ、ややお尻を突き出すような格好をとらせて背後から抱き寄った。
矢島のハダカも見てみたかったが綺麗なドレス姿のままの方が興奮させられる。
おれは後ろから左手で胸を揉みしだき、右手はとうとう女の最深部へ到達させた。
「…こんなに濡らして…」
わざと聴こえるようにぴちゃぴちゃと右手中指で音を立てる。
「…ぅんっ…やだ…恥ずかしいよ…」
矢島は小声でそう呟きながらもお尻をくねらせ、おれの下半身に突きつけた。
「椿くんのここも…固くなってる…」

梅雨の近づく水無月の夜空にリズミカルな瑞々しい音と囁きが人知れず響いていた。
「んっ…ハぁッ…っ…んっ…ぁ…」
パーティードレスを腰までたくし上げられ、後ろの穴も曝されたまま彼女は腰を前後に振る。
それに合わせておれは彼女の膣に咥えられた下半身を打ちつける。
誰かに見つかるかもしれないこんなギリギリの状況でもおれは止められなかった。
時折会場から湧き上がる歓声を聞いてどきっとしながらも、
同時に締め付ける彼女の膣内がこのアバンチュールを燃え上がらせる。
おれは自分の一本の指を咥えてクチュクチュとよだれを絡ませるとその指を矢島の菊穴にねじ込んだ。
「…!!…だっ…だめぇ!そんな…とこ…ゃあ…んっ…!」
膣壁と直腸壁を介して、自分のもう一本の棒が出し入れされる感触を指で感じる。
指を動かそうとするとただでさえ窮屈な後ろの穴がさらに締め付けた。
「…ゃんっ!…ハァ…ダメだってば…お願い…抜いてぇ…」
「わかった…抜くよ」
腰の動きを止め、指を残したままペニスを膣口から抜いた。
「そっ…そっちじゃなくてぇ!」
愛蜜でトロトロになった花びらが未練たっぷりにヒクついている。
おれは矢島の横に立ち、空いているもう片方の手で今度は前からも責め立てた。
「ほら…もっと力抜いて楽に…」
耳元でそっと囁きながらクリトリスを愛蜜マッサージし、
後ろ側ではゆっくりと指を抜きかけてはまたねじ込む。
「あんっ…ほ…ホントに…ダメ…っ…!」
矢島は膝をついて崩れ落ちてしまったがおれの手は動きを止めない。
「…っ!…ハァ…ぉ…おかしく…なっちゃう…んんっ…!」
「…お尻でも感じてきちゃった?」
「そ…そんな…コト…」
「もうこんなに解れてきてる…前もビショビショだね…」
その証拠に、と言わんばかりに彼女の前後の性感帯をもみくちゃに刺激する。
「ひぁっ!…もぉ…意地悪しないで…お願い…頂戴…」
「何をどうして欲しいって?」
「…その…椿くんの…ぉ…ぉち…」
「ん?」

「お…おち◯ちんを…わたしの…ぉ…おま◯こに…入れて…」
「よくできました」
おれは矢島を近くにあったテーブルに座らせ、上半身を押し倒す。
垂れ下がったままの両足を膝下から抱え上げてまんぐり返しの格好にすると
愛液を垂れ流してヒクヒクと物欲しげな下の口に望みの物をぶち込んだ。
「ハぁッ…んっ…」
矢島はテーブルの縁を逆手に掴み下半身を悶えさせる。
もはやそこに男勝りな彼女の姿はどこにもなかった。
「男」を求める一人の淫らな女がいやらしい音と分泌液を出している。
おれは何もかも忘れ、本能のままに目の前の黄色に咲く一輪の花と濡れあった。

「…わたしね、すっごく羨ましかったの」
乱れた装いを整え、ふいに矢島が口にした。
「丘さんもキレイだったし、卜部さんも椿くんと仲良さそうだったし…」
見つめる先の東の空にはもう、夏の大三角形が見え始めている。
「今までの学生生活、もっと恋愛しとけばよかったかなー、なんて」
表情は努めて明るく振舞っていたが、少し声が淋しげに震えているような気がした。
おれは黙って矢島の横に並び、ただ話を聴くだけだった。
「…ごめんね、悪い女だよね…わたしって。椿くんには卜部さんがいるって知ってるのに」
「矢島…」
「でも嬉しかった!下の名前まで覚えててくれて、正直忘れられてると思ってたもん」
ニコッと笑顔を見せ、また視線を夜空の星座に向けた。
「ねぇ、椿くん。もしわたしが椿くんのこと…」
「…おれ…のこと…?」
「ううん、やっぱりなんでもない!」
「矢島……おれは…!」
「言わないで」
おれの言葉を遮るように矢島はキスで唇を閉じさせた。
「…今日のことはわたしたち二人だけの思い出にしましょ」
「…うん」
「卜部さんのこと、大事にしてね。言える立場じゃないけど…もうこんなことしちゃダメだからね」
「わ…わかってるよ!」
「じゃないと…わたし椿くんのこと、嫌いになっちゃうからね…」
夜空を見上げ、表情を隠して言ったその言葉はやはり震えて聴こえた。
「さ!そろそろ戻らないとみんなに怪しまれちゃう!」
おれのよく知る矢島の調子に戻って笑顔を見せる。
「せっかくのパーティーなんだし、ぱぁーっと楽しくやりましょ!」
大きく腕を広げて笑いかける彼女が本当に愛らしい花のように見えた、そんな夜だった…。

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